腰痛
人間が2本足で立ち、背骨がS字に湾曲し骨盤の上に乗り、重力が筋肉や骨に負担をかけるようになって以来、人と腰痛は切っても切れない関係と言われています。
※骨盤は左右の寛骨と仙骨、尾骨から構成されています。寛骨とは、腸骨、坐骨、恥骨の3つの軟骨でつながっています。仙骨と恥骨は前方に湾曲して恥骨で結ばれ「骨盤」となります。(図)
一口に“腰痛”と言っても原因は様々です。腰椎や椎間板に器質的な変性(変形など)のある場合や、腰椎の機能的な障害(可動性の障害など)のある場合、また内臓疾患の関連痛から起こる場合もあります。 痛み方も人それぞれで、動かすと痛む、じっとしていても痛む、重だるい、動き始めだけ痛みしばらくすると痛くなくなるなどがあります。 原因を分類すると以下のようになります。
1、 器質的変性によるもの
2、 機能的障害によるもの
3、 内臓疾患による関連痛によるもの
4、 心理的要因によるもの
1、器質的変性よる腰痛
骨や軟部組織の代謝異常・変形により形状的に異変のあるものです。 代表的なものに以下があります。
①腰椎椎間板ヘルニア
腰椎と腰椎を連結する椎間円板という繊維性軟骨組織でできた線維輪が変性を起こしたり、亀裂が入ることにより、中心にある寒天状の髄核が外へ押し出されることにより神経を圧迫し腰痛や坐骨神経痛を引き起こします。
②腰椎分離・すべり症
腰椎の椎弓というところに亀裂が入り分離し、前方にすべる症状です。骨が見完成の成長期に過度な運動をすることで発生します。
③脊柱管狭窄症
先天性や老化により脊柱管という神経の入っている管が、腰椎や椎間円板の変形によって圧迫され狭くなってしまうことにより、腰痛や足のシビレを起こします。間欠性跛行という歩行困難が起こります。
- 間欠性跛行・・・少し歩くと足にシビレやだるさがでるが、しゃがんだり休憩すると症状がなくなりまた歩き出せる。これを繰り返す。
④変形性腰椎症
使いすぎや老化により、腰椎の関節部に骨棘という棘ができ、神経を圧迫し腰痛やシビレを起こします。
2、機能的障害による腰痛
これは、骨や椎間板には異常がなく筋肉の血流障害や緊張、骨や関節の可動性の低下などにより体の動きが制限されて起こる腰痛です。
①椎間関節性腰痛
重いものを持ち上げたり、急の体を捻ることにより、腰椎と腰椎を後方でつなぐ椎間関節という関節が、捻挫を起こし炎症してしまい引き起こす腰痛。 一般的に「ぎっくり腰」と言われています。 背骨のちょっと横が痛みます。
②筋・筋膜性腰痛
椎間関節性腰痛についでぎっくり腰の病態として重視され、疲労などによる筋肉の過緊張・硬直により起こる腰痛です。 背骨の両側の筋肉に痛みが出やすいです。
③姿勢性腰痛
日常の不良姿勢から起こる慢性の腰痛です。
④仙腸関節のズレによる腰痛
骨盤を形成している仙骨と腸骨をつなぐ関節で、極端な重心のかたよりや体の捻れ、筋肉の過緊張などで起こるズレによる腰痛です。 よくある腰痛の多くがこの関節にずれを持っています。 腰の下部に痛みがでます。
3、内臓疾患の関連通による腰痛
胃・すい臓・腎臓・子宮などに炎症や腫瘍が原因で腰痛が起きることもあります。どこが痛いか分からない鈍痛が特徴です。また腎臓結石や尿路結石でも腰痛が起き、激痛を訴えます。
4、心理的要因による腰痛
精神的ストレスでも腰痛は起きます。特に起床時に痛むことが多く、本来睡眠中は体の緊張 がゆるんでいなければならないのですが、ストレスが原因で自律神経の働きがにぶり、リラックスできない状態になってしまいます。
上記のように様々な原因で腰痛は起きますが、外傷的なもの(骨折、捻挫など)意外の根本原因は生活習慣によるもがかなりの割合を占めています。 (車社会のため歩くことが少なった、デスクワークなど椅子に長時間座って作業することが増えた、食生活のみだれ、肥満など) 中でも姿勢の悪さからくる体の歪みが多く見受けられます。
そもそも人間の体は左優先の形をとっています。 これは地球が左回りで自転し、左回りで太陽を公転していることが影響しています。例えば陸上のトラック、野球のベース、スケートのリンクなどすべて左回りになっています。これは心臓の位置にも関係しますが、人間は左側に体重をかけて行動するほうがバランスを取り易いという自然の法則なのです。 中には右側に体重をかけたほうがバランスを取り易い方もいますが、往往にして体に歪みのあることが多いです。また極端に左重心になり過ぎても体に歪みが生じます。
○自分でできる腰痛の予防・改善方
1、重心を変えてみる
まず自分の重心をチェックします。 多く当てはまる方があなたの重心です。
片足で立ち安定する方 | 右足 |
左足 |
椅子で足をくんで下にくる方 |
右足 |
左足 |
ボールを蹴りにくい方 |
右足 |
左足 |
足を伸ばして座り外に開きにくい方 |
右足 |
左足 |
立っている時、座っている時、歩行時に自分の重心の逆に意識して体重を掛けましょう!
5~10分で痛みが和らいできます。
2、ストレッチや体操をする
○両方の足首を内外20回ずつまわす。
○仰向けで寝て片膝を抱える。(臀部のストレッチ) 左右20秒×2セット
○仰向けで寝て両膝を抱える。(腰部のストレッチ) 20秒×2セット
○座った状態で片足を折り曲げて上体を後ろに倒す。(太もも前面のストレッチ) 左右20秒×2セット
○足を伸ばして座り上体を前に倒す。(太もも後面のストレッチ) 20秒×2セット
ストレッチはあまり無理をせず息を吐きながらゆっくり伸ばしましょう!
3、ツボを刺激する
○急性のタイプ
腎兪・委中(いちゅう)・環跳(かんちょう)・大腸兪・志室・腰痛点
○慢性で気候の変化、長時間の静止で痛むタイプ
崑崙(こんろん)・腎兪・委中・環跳・大腸兪・殷門
○慢性で腰下肢にだるさがあり、疲れると増強し横になると軽減するタイプ
太谿(たいけい)・腎兪・委中・湧泉(ゆうせん)
腰は文字通り、体の 「要」 です。 人間のあらゆる動作の中心は、「腰」 にあります。積極的にケアをして腰痛に負けない体を目指しましょう!